2012/02/19 07:34┃登録者:えっちな名無しさん◆2Q4mdyHY┃作者:名無しの作者英子は2度目の診察を受けた。 
やはり、根本的な解決をしたかどうかは聞かれたがそれはまだ、何もしてないと答えた。 
医師は、気持ちは分かるがこのままでは根本的に解決しない、今すぐにとは言わないが 
相手に迷惑していることを伝えるのは早いほうがいいとアドバイスされた。 
睡眠薬の効果は確実に現れていて、副作用もないことからもう1週間処方する事になった。 
翌週の状態を見て、睡眠薬の量を減らしたり薬を止めたりするとの事だった。 

英子は医師のアドバイスどおりに山本に迷惑しているとメールで伝えようと決心した。 

それに、添付されてくる画像は一体何かも聞くつもりであった。 
これ以上、付きまとうようだったら出るとこに出ると脅してみようかとも・・・ 
しかし、変質者の場合は追い詰めると何をしでかすか分からない事が恐ろしかった。 
英子は画像を知人に送られたりインターネットで公開されることを非常に警戒していた。 

おそらく、山本は携帯についているカメラかデジカメで英子の事を撮影したに違いない。 
携帯の場合は、電話機に画像が保存されている。デジカメの場合はやっかいだった。 
目の前で画像を破棄させてもパソコンのメモリやCDRなどに保存している事もある。 
それらを確認するためには、山本の部屋に侵入して山本のパソコンを調べる必要がある。 
しかし、留守宅に侵入することは不可能である。では一体どうすれば・・・ 

英子は考えた末に結論を出した。 
山本の部屋に招待されるしかない。 
山本は両親と一緒に住んでいる、 
だからあのホテルでレイプされた時も 
部屋には連れて行けなかった。 
では、どうやったら山本の部屋に行く事ができるのだろうか? 

たとえ、山本の部屋にうまく侵入することができても、パソコンが部屋にあるかどうか? 
また、パソコンにパスワード設定されていないだろうか? 
山本がひと時も英子の側を離れる事がないかもしれない。 
そして、山本の部屋で再びレイプされないだろうか・・・ 
英子の頭の中は錯綜していた。考えがまとまらない・・・ 

山本の家に行くためには迷惑だとメールを返信する事はできない。 
迷惑だと思う相手の家に行くとなれば山本も警戒するだろう。 
山本は英子との交際を求めているわけだ。 
ならば、交際の条件として、山本の両親に会いたいとか家を訪ねたいとか 
いくらでも主張できるのではないだろうか。 

先ずは、山本に話をしたいと伝えよう。 
それから、山本の部屋に行きたいという方向に持っていこう。 
そして、山本はおそらく、からだの関係を求めるだろう、 
それをうまくはぐらかせて、肝心な目的を達成するためには 
どうしたらいいのだろうか? 

英子は数日かけて考えをまとめて山本にメールを返信する事にした。 

英子は決心を固めると山本にメールを出した。 

山本君とは秀樹の友人として付き合ってきたため今まで恋愛対象として 
全く意識した事はなかった。 
夏の事件は自分の目の前で起きたことが信じられなくて自暴自棄になって 
しまった結果起きたことだ。 
その後、秀樹が村上と付き合うことの交換条件として自分を山本君に差し 
出したと聞いたが、自分は物ではないので二人の間の取引を私にあてはめ 
ないで欲しい。 
山本君の希望は取引の結果としてではなくて本心で付き合いたいというの 
なら考えない事もない。 
添付して送ってくる画像はいつ撮ったもので何故山本君が持っているのか 
詳しく知りたい。 

だいたい、こんな内容だった。 

山本からは直ぐに返信がきた。 

別荘での出来事は自分にとってもショックだった。 
しかし、翌日の英子と過ごした夜は生涯忘れられない位の最高のひと時だった。 
英子の事が忘れられない。英子と付き合いたいというの本心からで、たとえ秀樹 
が英子との仲を祝福しなかったとしても心は変わらない。 

肝心の画像の事には一切触れられていなかった。 

英子は何気ない会話をするように何度かメールをやりとりしたが、 
画像の話になると山本は全く触れようとしなかった。 
次第に、英子は痺れを切らせて 
「あの画像はいつ撮ったものか」答えてくれないのなら付き合うこともできない。 
そのようなメールを送った。 

山本はかなり返答に困ったのか、そのメールを送ってからは返信がこなくなった。 

英子は10分、20分と待つうちにだんだんと腹がたっていった。 
山本は肝心なところで逃げにはいる奴だったのか・・・ 
山本のことを考えてみると、秀樹といる時以外は会ったことはなかったが、 
彼は2浪していたので秀樹よりも2歳年上だったが、いつも秀樹の指示に 
従って行動をしていた。 

そんな秀樹の事を見て頼もしい人だと優越感に浸ったこともあった。 
山本は自分の意志で行動をしない男なのかもしれない。 
もしかすると、秀樹と山本がぐるになって英子の事をはめたのではないか・・・ 
ふと、英子の脳裏に浮かんだ。 
いや、ありえないことではない。 

山本にレイプされた時は写真を撮られた覚えはない。 
しかし、その前日と前々日は酔って意識がなかった。 
その間に山本と秀樹が交互に私の事をレイプして写真撮影もしたのかもしれない。 
しかし、翌日の秀樹が村上をレイプした事は説明がつかない。 
ただ単に仲間割れしたのか、秀樹が眠りこけてしまって説明のつかなくなった 
山本がドサクサ紛れに秀樹に殴りかかったのか・・・ 

しかし、移動中の車中やラブホでの山本は秀樹の事をけなしていた。 
秀樹が私の事をデブだとかバカだとか言ったとか・・・ 
それだけでなく、秀樹は山本の事を召使のように扱ういけ好かない野郎だとか 
なんとか言っていた。 
彼らの間には友情があったわけでなく、いわゆるいじめ関係があったのだろうか? 

いわゆるいじめっ子といじめられっこの関係・・・ 
秀樹は山本をさんざんに利用して下僕のように扱っていた。 
これは事実かもしれない。私といる時でさえ、山本をこき使っていた。 
別荘でも、山本は気のきくいい人だと思っていたが、ただ単に秀樹のことが 
恐くて下働きをしていただけなのかもしれない。 
秀樹に言われて車を出したり、私たちの行の送迎やアリバイつくりをして 
いたのも秀樹を恐れていたから・・・ 

確かに、秀樹の事を殴っている時の山本の形相にしろ、その後、秀樹を殴った事を 
自慢げに英子に聞かせた時の嬉々とした表情。山本は本当は秀樹のことが嫌いだった 
のではないだろうか? 
そうなると、私に対して酷い事をしたことも秀樹に対する復讐・・・ 
もしそうだとすると、説明もつく。 

しかし、どう考えても、別荘での出来事が理解できなかった。 
一日目、4人でお酒を飲み酔っ払う。酔った勢いで秀樹が寝ている私をレイプした。 
二日目、山本のとりなしで仲直りをする秀樹と私。夜は再びお酒を飲む。 
    翌朝目覚めると秀樹が酔って意識のない村上をレイプしていた。 
三日目、山本にあちこち連れまわされた挙句、帰る事ができなくなりラブホに宿泊。 
    そこで山本に一晩中レイプされる。 
別荘では酔って意識のない女性が2人もレイプされている。 
翌日は抵抗する私を山本が無理やりにレイプした・・・ 

三件のレイプに共通するものは何か? 
別荘でのレイプは共に意識のない相手に対するものだった。 
しかし、ラブホでは意識のある時にレイプされた。 
別荘でのレイプは両方とも秀樹によるものだったが、ラブホでは山本だった。 
三件中二件は英子が被害者で一件は村上が被害者である。 
三件共に共通するような事はなかった。 

ふと時計を見るともう就寝の時間だった。 
医師の指示どおり、最近は規則ただしい生活を送っている。 
薬の用法もきちんと守っている。 
その成果もあり、ここのところはよく眠れるようになっていた。 
今日は、山本からの返信もなさそうだし、薬を飲んで就寝しよう。 

英子は、いつものように睡眠薬を飲み、床についた。 

その時、英子の頭にあることが浮かんだ。しかし、静かに眠りに落ちていった。 

翌日、英子は山本にメールを入れた。 

山本のことをよくは知らないし、山本君のご両親の事も何も知らない。 
この間も、自宅に連れて行くことはできないと断られたが、それでは、 
秀樹の時と全く同じだと。もし、付き合うのなら相手のご両親に隠れて 
付き合うのはもうイヤだと。秀樹の時は自宅に招待すらしてもらえなか 
ったどころか両親に隠れて付き合っていた。あのような付き合いはもう 
したくない。 

このような内容だった。 

山本は自分に都合のいい内容のメールには直ぐに返信をしてきた。 

はじめのメールでは自分の両親の事を説明していた。 
ここでは細かい内容は省くが、父は医者だと言っていた。 
自分は父が年をとってから生まれた子供であるので、 
サラリーマンならもう定年退職している年齢だと。 
の事にはあまり触れていなかった。 
ただ、地元の文化サークルに入っているため日中は留守が多いとだけ書いてあった。 

そのメールの直後に入った内容は、 
自分は秀樹とは違い、時がたてば両親にも紹介するし、自宅にも来てもらいたいと。 
ただ、田舎に住んでいるため、英子が来るのは大変ではないかとも書いてあった。 
最寄の駅からはバスも出ているが駅近くに月極め駐車場を借りて車で駅まで通って 
いるので、英子が来るなら車で送迎するが部屋まで送り迎えしてもいいと。 

その後、山本のすんでいる街の話や、就職の話、大学入学前の話などを何度かやり取りした。 
話がひととおりすんだところで、今度、山本の家に遊びに行きたいとメールをした。 

メールだけではなく電話でも話をしたいとも付け加えておいた。 

それから、山本から英子に電話がかかってくるようになった。 
この時には既に山本は英子と付き合っているつもりになっていたのだろう。 
まるでストーカーのように一日に何度か電話をかけるようになっていた。 
英子の方から山本に電話をかけることはなかった。 
山本がストーカー気質で事あるごとに電話をかけてくるのでその必要がなかった 
ことと、山本が言うには、英子は一人暮らしをしているから電話代の負担だけでも 
大変だろうと気遣っていることも主張した。 

携帯の呼び出し音が英子の部屋に鳴り響いた。 
「まただ・・・」 
山本からの電話だった。ここのところ朝昼晩だけではなくまるで分刻みのように 
電話をかけてきていた。このままだと再び英子の気が変になりそうだった。 
そろそろ、目的を遂げる時かもしれない。そう思いながら電話をとった。 
「もしもし、英子ちゃん?山本だけれども」 
「うん」 
「今何していたの?」 
「何って、卒業試験の勉強していたよ」 
英子はうんざりしながら答えた。 

「そうなんだ、僕も勉強していたよ」 
だったら電話なんかしてくるなよ・・・英子はそう思った。 
ひととおり何気ない会話を交わした後、英子は山本に聞いた。 
「ねぇ、そろそろ、山本君の家に遊びに行きたい」 
「えっ!ホントに!ぼ、僕の方はいつでもいいよ」 
「付き合いだしてから直ぐにでも家に来てもらいたかったけどなかなかきりだせなくて」 
「いつでも、大歓迎だよ!今すぐでもいいよ」 
「で、でも、両親は仕事があったり地元のなんか集まりがあったりして直ぐにはあえないけど」 
山本は嬉々としていろいろな言葉をまくし立てた。 

「じゃ、今週末はどう?」 
「えっ・・・しゅ、週末・・・週末はちょっと忙しいから・・・」 
「そ、そうだ、あ、明日でもいいよ」 
「えー明日だなんて急すぎるよ」 
「じゃ、来週の月曜日はどう?」 
「・・・」英子は少し考え込んだ。 
「月曜日はご両親いらっしゃるの?」 
「えっ?あっ、あぁ、あーちょっと父は仕事だし、も出かけていていないけど」 

英子はしばらく考えてみた。 
山本の両親が留守の方が英子にとっても都合がいいかも・・・ 
「ふーん、そうなんだ、でも、いいよ」 
「えっ、月曜日でいいの?」 
「うん、いいよ」 
「た、楽しみにしているよ」山本は興奮しながら話していた。 
「でも、ちょっと教えて欲しい事があるの」 

「うん?なになに?」 
「あのさ、山本君さ」 
「うんうん」 
「前に、画像送ってきたよね」 
「・・・」 
「ねぇ、聞いてる?」 
「あっ、え、うん、き、聞いてるよ」山本はしどろもどろに答えた。 

「あれ、私の写真だよね・・・」 
「・・・」 
「あれ、どうしたの・・・」 
「・・・」 
山本は電話口の向こうで黙りこんでしまった。 
「ねぇ、聞いてるの?」 
「・・・」電話からは山本の息遣いのみが聞こえてくる。 
かなり呼吸が荒れているようだった。 

「なんで、山本君があんな写真持ってるの?」 
「・・・」 
「ねぇ、聞いてる?」 
「えっ・・・あぁ、うん」 
「誰が撮った写真なの・・・」 
「山本君?山本君が撮ったの?」 
「・・・あっ、うん」 

「どうして、あんな写真撮ったの?いつ撮ったの?」 
「・・・」 
「ねぇ、黙ってないで答えてよ!」 
英子の口調はだんだんと激しくなっていった。 

「他にも写真あるんでしょう?」 
「・・・」 
「デジカメで撮ったの?」 
「・・・」 
「聞いてるの?」 
「う、うん・・・」 
英子が何を聞いても山本はあいまいな返事をするだけで明確な答えを出さなかった。 

「お願い、答えて。あんな写真処分してもらいたいの」 
「・・・」 
「私の気持ち分からないの?」 
「・・・」 
「ねぇ、山本君ってそんな人だったの?」 
「ち、違うよ・・・」 
「じゃぁ、お願い、処分して」 
「わっ、分かったよ」 

「デジカメで撮ったの?」 
「あぁ、うん、そ、そうだよ・・・」 
「お願い、処分して」 
「・・・うん・・・」 
「私の見てる前で、消去して」 
「うん」 
「だいたい、いつあんな写真撮ったの?」 
「・・・」 

「どうして、あんな写真送ったりしたの?」 
「・・・」 
「なんで、あんな写真撮ったのよ」英子もだんだんとヒステリックになっていた。 
「だって、英子ちゃんが綺麗だったから、かわいかったから、どうしても 
写真に残しておきたかったんだ」 
ようやく山本が口を開いた。 
「だからって、あんな写真じゃなくてもいいでしょう」 
「ち、ちがうよ、顔写真も撮ってあるよ」 
「なおさらイヤよ、全部消去してよ」 

「あんな写真撮るような人と普通に付き合えると思うの?」 
「・・・」 
「ねぇ、答えてよ」 
「うん、分かったよ。全部消去するからお願い、別れないで」 
「・・・」 
困った奴だ、ただメールをやり取りして一方的に電話をかけてくるだけの 
間柄なのに既に付き合っていると思い込んでいる。 
しかし、そのほうが英子にとって都合はよかった。 
このままだと、うまく、全て解決できる。英子は心の中でそう思った。 

「じゃ、月曜日に、あたしの目の前で全部消去してよね」 
「分かった、うん、約束するよ。だから別れるだなんて絶対に言わないで」 
「うん、でも、あの写真、いつ撮ったの?」 
「・・・」 
「教えてくれないなら、もう、これきりにしてもいいんだよ」 
「えっ、そ、それは・・・げ、月曜日に全て、すべて話すよ」 
「なんで、なんで月曜日なの?今、聞かせてよ」 

「え、英子ちゃんと、はじめて関係した時だよ」 
「うそ、あの時、写真撮られなかったよ、それに、山本君カメラもっていなかった」 
「か、かばんの中にしまってあったんだよ」 
「うそでしょ、だって、海で遊んでいる時も夜みんなで飲んでいる時も写真一枚も 
撮らなかったでしょ。カメラ持っていたならなんで、一度もつかわなかったの?」 
「あ、ああ、えーうん、あ、あれ、かばんの奥にあって気がつかなかった」 
「そ、それが、あの時、着替えを探していて気がついたんだ・・・」 
「うそでしょ、だって、あの時、写真なんか撮らなかったでしょ」 
「英子ちゃんが気がつかなかっただけだよ、ね、寝ていたでしょ」 

あの時、英子は一睡もしなかった。 
山本に陵辱されている時に気が遠くなりかけたが、そのたびに山本は 
乳首をかんだり、耳たぶをかんだりして英子を覚醒させていた。 
まるで、いたぶるかのように。その時の山本は完全に変質者となっていた。 
あの時のことは克明に今でも思い出す事ができるくらいだ。 
その時のことを思い出すだけで、今でも吐き気がする。鳥肌が立つ。 
やはり、山本を許す事はできない。写真さえ、破棄してしまえば・・・ 

あの時寝ていたのは山本だけだった。しかし、ここで山本を追及しても本当の事 
など言う事はない事は分かっていた。とにかく、今は山本の写真を処分する事が 
最優先事項だった。 
「そうなの・・・」 
「う、うん、英子ちゃん、寝ていたから。悪いとは思ったのだけども・・・」 
「でも、英子ちゃんかわいいから、魅力的だったから」 
山本は必死に言いつくろっていた。いかにも嘘をつきとおそうとしているようだった。 
真実はわからない、でも、この男が私の写真を持っているかぎりは・・・ 

「約束は、絶対に守ってね」 
「う、うん。分かったよ、心配しないで」 
英子は山本の家にいく打合せをして電話を切った。 
当日、お昼に英子は山本の家の最寄の駅に行き、そこまで山本に迎いにきてもらう 
ことにした。当日、英子は山本のために弁当を用意するのでそれを山本の部屋で 
食べる事にした。 
英子が弁当を作るといったら山本は子供のようにはしゃいで喜んでいた・・・ 

月曜日、英子は約束の時間に最寄の駅についた。 
山本は駅のホームで英子の事を待っていた。 
よほど待ち遠しかったのだろう。 
山本の実家のある地方は英子が思っていたよりも寒かった。 
こんなに寒いとは思わなかった・・・ 
「英子ちゃん、待っていたよ、電車がつく時間わかっていたけど 
待ち遠しくて10分以上早くから待っていたんだよ」 
「そうなんだ・・・あ、ありがとう」 
「いいんだよ、寒いでしょ、早く、車に乗りなよ、車に乗ったら直ぐだから」 
「荷物、大変でしょ、持ってあげるからかして、ほら」 
そう言うと山本は英子の荷物をもった。その中には、今日、山本と一緒に食べる 
弁当が入っていた。英子は今日のため、昨晩から下ごしらえをして準備をしていた。 

山本の実家は駅から割とすぐについた。 
山本があらかじめ言っていたように、両親は不在だった。 
山本のお父さんは医者だと言っていたが、家はこじんまりとして 
そんなに大きなものではなかった。 
車は、駐車スペースが2台分あり、1台は山本のものが停まり 
もう一台分は父親のものなのだろう。 
庭は郊外のため比較的広く作られていたが、あまり手入れは行き届いていなかった。 
家の中も、綺麗にはしているようだが、掃除が行き届いてるような感じではなく 
ただたんに散らかさないだけという感じがした。 

英子はすぐに山本の部屋にとおされた。 
山本の部屋は散らかってはいないが綺麗ともいえない部屋だった。 
ベッドと机とパソコンがあり、MDラジカセもあったが、 
MDやCDは見当たらなかった。 
どうやら、山本は音楽はあまり聞かないようだ。 
その割には、夏、出かけた時はカセットをたくさん持っていた。 

どうやら山本の話によると、音楽は全てレンタルでカセットにコピーをしている 
ようだった。CDは買う事はないようである。 
パソコンはわりと新しくしょっちゅう買い換えるようである。 
山本はガソリンスタンドでアルバイトをしていたが、バイトなどしなくても 
父親が欲しいものは大体買ってくれるようだ。 
しかし、山本が車に乗る事には反対なので、車は自分で安物を購入し、ガソリンも 
スタンドでバイトをして、そこでガソリン代を稼いでいるようだった。 

「ねぇ、山本君、さっそく、食事にしようか?」 
「う、うん、僕、女の人に弁当作ってもらうのはじめてなんだ」 
「えっ?だって、村上さんと付き合っていたでしょ?作ってくれなかったの?」 
「あ、あぁ・・・」 
山本は村上の話を出すと機嫌悪そうになる。 
それもそうだ、親友に寝取られてしまったのだから・・・ 

「ねぇ、音楽とかかけない?」 
「えっ?あぁ、音楽ね」 
「山本君、車でいろいろなカセットかけていたじゃない」 
「うん、あれ、全部レンタルしたのをダビングしただけなんだよ」 
「CDとか買わないの?」 
「全部レンタルですませている」 
「洋楽とか1年間レンタルに出てこないじゃない」 
「あ、洋楽、あんまり聞かないんだ」 

「私、洋楽すきだけども、山本君持っていないの?」 
「ごめん、ないんだ・・・」 
「そうなんだ、でも何故、カセットなんかつかっているの?」 
「ぼ、僕の車、ぼろぼろでしょ?お父さんが車に乗るの反対して買ってくれなかったんだ」 
「だから、安い中古車を買ったんだけど、CDとかついてなくて、あんまり音楽聴かないし」 
「それで、たまにみんなを乗せる時とかのためにレンタルで借りてきたのをカセットに 
ダビングしているんだ、だからカセットも全部車の中だよ」 

「ふーん、そうなんだ。山本君って人のために音楽借りてくるの?」 
「う、うん。そうだね」 
「じゃ、このラジカセ何につかうの?ダビング用?」 
「そ、それは、FM聞くんだよ、今、メールとかパーソナリティーに 
送ると番組の中で読んでくれるんだよ。それで、いろいろコメントしてくれたり 
するんだよね。なんだか、読まれるのが凄い楽しみでね、ほとんど毎日聞いてるよ」 
ラジオの話をする時の山本の表情は生き生きとしていた。 
現実世界に友達はいないのだろうか?ふと英子はそう思い気味が悪くなった。 

「じゃ、ラジオでもいいや、なんか音がないと私ダメなのよね」 
「えっ、本当!じゃ、FMつけるね。お昼の時間帯にいい番組やっているんだ」 
「そうそう、これ、女の子向けの番組なんだけども、僕、好きでよく聞いてたんだよね」 
「音楽も英子ちゃんの好きそうな洋楽いつもかかるよ。それに、この番組、 
留守電あって、そこに吹込みすると番組で流してくれるんだよ。 
僕の声も流れた事あるんだよ」 
山本はラジオの事になると本当に嬉しそうだった。 

「ねぇ、せっかくだから、お酒とかない?」 
「えっ?昼間から飲むの?」 
「うん」 
「ぼ、僕、運転しなくちゃいけないし」 
「大丈夫だよ、私、バスかタクシーで駅までいってもいいし」 
「今日は、英子ちゃんの部屋まで送るよ」 
「ううん、山本君と少しでもいいから飲みたいの」 

「うん、じゃ、お父さんのウイスキー持ってくるよ」 
「うん」 
山本はそう言うと急いで部屋を出て行った。 
「そうだ、おも沸かしてくれる?お味噌汁も持ってきたの」 
「えっ?」 
「おを注ぐやつ、おわんもあったらかして」 
「うん、分かったよ」 
山本は階段の途中でそう言うと急いで台所のほうへ向かった。 

その間に英子はひととおり山本の部屋を見回してみた。 
パソコンの周りにはCDRが何枚か置いてあった。 
横の箱を開けてみるとCDRが何枚も入っていた。 
机のまわりも整頓はされているが、埃っぽかった。 
英子はハウスダストアレルギーがあるので埃っぽいのは非常に気になった。 
山本はあまり掃除をしないようである。 
玄関から廊下にいたるところも埃っぽかった。 
山本のお母さんは掃除をしない人なのだろうか? 
そういえば、庭も手入れが行き届いていなかった。 

いつ、山本が戻ってくるか分からないの、あまり部屋の中を詮索する事ができなかった。 
しばらくすると、すぐに山本が戻ってきた。 
山本はウイスキーのボトルとグラス、氷、水をそしてお椀をトレーに載せて運んできた。 
ウイスキーは高級そうなものだったが、英子はあまり詳しくないので銘柄までは 
分からなかった。 
「おは、電気ポットで沸いているから、すぐにもってくるね」 
そう言うと再び山本は部屋を出て行った。 

英子は急いで、作ってきた弁当を取り出した。 
その間に、山本は電気ポットを持ってきた。 
「わぁ、凄い、本当に作ってきてくれたんだね」 
「そんな、たいしたものじゃないよ」 
「ううん。凄いよ、嬉しいよ。早く食べようか」 
「うん」 

「そうだ、食前酒でも飲もうよ、ぼ、僕が、ウイスキーを作ってあげるから」 
山本はそう言うとウイスキーを二つのグラスに注いだ。 
「うん、ありがとう」 
ウイスキーは音を立てながらグラスに注がれた。 
甘い香りが漂っていた。山本はグラスに氷と水を入れてタンブラーでかき回すと 
英子に渡した。 
「僕は、ロックで飲むのが好きだから」 
そういうと、山本は氷だけをグラスに入れてからからと音を立てながら氷を回転させた。 
この時、山本は口元に不気味な笑みを浮かべていた。 

「かんぱーい!」 
「乾杯!」 
英子と山本はグラスをあわせた。 
「おいしい!」 
「でよ、うん」 
山本は満足そうにうなずいていた。 
「ところで、山本君、約束覚えている?」 
「えっ?な、なに?」山本は明らかに動揺しているようだった。 
「だめだよ、とぼけちゃ」 
「えっ、あぁ、なぁ、ん?」山本は素っ頓狂な返事をした。 

「写真のことよ!」 
「あっ、あぁ、うん、あっあれね・・・」 
「約束したんだから、きちんと消してよね」 
「う、うん。大丈夫だよ」 
「今すぐ、消して」 
「う、うん」山本はそう言うとしぶしぶと腰をあげた。 

山本は机の中からデジカメを取り出した。 
「ほら、この写真でしょ」 
そう言って山本は液晶画面に英子の局部写真を映し出した。 
「もー、今写真撮って!早く消してよ」 
「う、うん。消すよ、ほら、消した」 
「まだ、あるでしょ」 
「あっ、うん」 
そう言って英子の胸のアップ写真を液晶画面に表示した。 
「消して」 
「う、うん」 

「顔写真もあるって言っていた、それも消して」 
「うん、これ・・・」 
英子が眠っている表情のアップだった。 
「やだー、いつのまにこんなの撮っていたのよー」 
「う、うん・・・」 
「ちょっとカメラかしてよ。私だってカメラのつかい方くらい分かるから」 
そう言って英子はカメラのメモリーの中を全てチェックした。 
メモリーの中にはそれだけだった。 
「ほかにメモリーはないの?」 
「うん・・・」 
「ホントに?嘘ついたらもう帰るよ」 
「あっ、あと一つ予備のがあるけど、なにも撮ってないよ」 
「調べるから貸して」 

山本は同じ引出しの中からもう一つのメモリーを取り出した。 
「貸して」英子は山本からメモリーを取り上げるとそれもチェックした。 
そのメモリーは山本の言うとおりデータは何もなかった。 
「ほ、本当だったでしょ。じゃ、ほら、早く、食事しよう」 
「携帯にはこの画像ないよね?」 
「えっ?なんで?この画像送った時の履歴で残っているんじゃない?」 
「えっ、そ、そうだね、でも、そんな昔の履歴残っているかな?」 
「じゃ、メモリから何まで削除して」 
「えっ、だ、ダメだよ」 
「私、安心したいの。こんなんじゃ、安心できないよ」 
「・・・」 

「ねぇ、お願い」 
「わ、分かった、全部削除するよ」 
「じゃ、携帯貸して。私が削除してあげる」 
「う、うん」 
山本はおとなしく携帯も渡した。 
英子はいろいろと操作して画像が残りそうなものは全て削除した。 
「こ、これで、安心したでしょ・・・」 
「うん」 
「じゃ、食事しよう」 
「うん、そう言えば、山本君、ラジオにメール送っているとか言っていたでしょ」 
「うん」 
「携帯から送っているの?」 

「ううん、パソコンから送っているよ」 
「それって、今聞いてるのに送るの?」 
「うん、HPがあるからメールしたり掲示板に書き込んだり」 
「ふーん、今さ、メール送ってみない?」 
「えっ?今?」 
「うん、彼女がきてるとか何とか書いて送ってみてよ。読まれたら面白いでしょ?」 
「あっ、うん、そうだね、じゃ、やってみるか・・・」 
山本はそう言うとパソコンの電源を入れた。 

お気に入りから番組のHPを呼び出し、メールの欄をクリックするとメールを 
送れるようになっていた。 
山本は彼女がはじめて自宅に遊びに来ていることや弁当を作ってくれている 
ことなどを書いて送信した。 
「読まれたらいいねー」「うん」 
「じゃ、もう食べてもいいよね」 
「そうだね」 

「おいしいよ!英子ちゃん、料理上手だね」 
「ありがとう。こんなんでよかったらまた作ってあげるね」 
こうしていると英子と山本は本当の恋人同士のように見えた。 
「英子ちゃん、水割り、全然飲んでいないじゃない」 
「えっ?あぁ、うん。山本君は?」 
「僕は、もう2杯目だよ、しかもロックでね」 
「英子ちゃんのは水割りだしウイスキーの量もそんなにないから 
ぐっとあけちゃおうよ」 
山本は英子にウイスキーの水割りをすすめた。 

「濃かったかな?なんだったら、水もっと入れてあげようか?」 
「ううん、山本君は水、入れないの?」 
「えっ?あっ、あぁ、うん、うんそ、そうだよ」 
山本は額に汗を浮かべながら答えた。 
「み、水好きじゃないんだよね。ロックのほうが好きなんだよ」 
「じゃ、私のロックにしようかな?」 
「えっ・・・えっ英子ちゃん、ウイスキー飲みなれていないでしょ?」 
「うん」 
「だったら、うん、み、水割りのほうがいいよ、慣れてからの方がいいよ」 
「そうだ、水割り飲んで、慣れたらロックにしなよ」 

「あー山本君ずるい!」 
「えっ!!!なっなにも・・・ずっずるくないよ!!!」 
「えっ?何をそんなに慌てているの?」 
「えっ、だっだって、ずるなんかしてないよ」山本はずり下がっためがねを直したり 
額の汗を拭ったりきょどきょどしたりしていた。 

「ずるしたとかいっているんじゃなくて自分だけおいしいウイスキー飲んで 
私には水割りでごまかそうとしてるんじゃない?」 
「えっ・・・ちっ違うよ・・・いいんだよ。ストレートで飲んだっていいよ」 
「ただ、なれていないなら水で割ったほうが飲みやすいと思ったんだ」 
「うん、なんだったらストレートで飲む?」 
山本は少々ホッとしたような残念そうな顔をして言った。 

「うーーーん、ストレートはちょっとね・・・」 
「私もロックで飲みたいな」 
「じゃ、この水割り、山本君にあげる」 
「えっ・・・あっ、あぁ、いいよ、ぼ、僕、自分のがあるから」 
「ん?私ロックがいいから、もう水割りはいいよ」 
「じゃ、下に行ってこぼしてくるよ」 
「えっ?何もこぼす事ないじゃない、もったいないよ」 
「いいよ、たくさんあるから」山本はきょどりながらしどろもどろに言った。 

「そんなに、慌てなくてもいいよ」 
「えっ!あっ慌ててなんかいないよ!」山本は興奮気味にいった。 
「もったいないから、私、全部、飲むよ」 
「えっ?英子ちゃん・・・全部飲むの?」 
「うん、かして」 
「あっ、ああ、うん、いいよ」そう言うと山本は英子に渡した。 

グラスを受け取ると英子は一口水割りを飲んだ。 
「ホントにこれおいしいね、何杯でものめそう」 
「そう?うん、遠慮しないでたくさん飲んでね」 
「うん、ありがとう」 
そう言って英子はもう一口飲んだ。 
「山本君、飲んでる?食べてる?」 
「うん、英子ちゃんの料理とてもおいしいよ・・・」 

「おいしい料理においしいお酒、もう、幸せだね」 
「うん、あれ、もう番組終わっちゃうみたい」 
「あっ、本当だ、そういえば、メール読まれなかったね」 
「残念だね」英子は特に関心もなさそうに言った。 
「あぁ、本当に残念だ・・・」山本のほうは言葉のとおり本当に残念そうだった。 
「うん、なんだか、つかれてきちゃったかな・・・」 
「えっ?山本君も?私もなんだかだるくなってきた」 
「そうなんだ、ぼ、僕、昨日、ちょっと緊張していてあまりよく眠れなかったからな」 
「そう、私は、夜下ごしらえして、朝早く起きてお弁当作ったからね・・・」 

「山本君、もう、酔っちゃったの?」 
「えっ?ううん、まだロックで3杯目だからそんなには酔ってないよ」 
「酔い覚ましに、このお水飲んだら?」 
「いっ、いいよ、水、あまり好きじゃないんだ!」山本は慌てていった。 
「そう?お水飲んだら、すっきりしない?」 
「しないしない!」 
「ふーん、じゃ、私、お水もらおうかな?」 
「う、うん、飲みなよ。水はアルコール分解するからからだにいいよ」 

「ん?そうなの?じゃ、山本君も飲めばいいのに」 
「いいよ!飲みたくないよ!」山本は強くいった。 
「なにも、そんなに怒ることないのに・・・」 
「ご、ごめん、ん・・・」 
「山本君?」 
「ん、ごめん、ちょっと疲れて」 

「ふぁーーー、なんだかあたしも疲れているみたい」 
「久しぶりにお弁当作ったしな」 
「私も、ちょっと酔ったのかな・・・」 
英子は体がだるくなってきた。 
まるで、いつも薬を飲んで眠る時のような感じもする。 

「や、山本君?」 
「うん、ごめん、ちょっと、体がだるくて・・・」 
「大丈夫?ちょっと横になる?」 
「ご、ごめん、ベッドに横になってもいいかな?」 
「うん、大丈夫?平気?」 
「うん、少し休んだらよくなるから・・・」 
そう言って山本はよろよろとベッドに向かった。 
「うん、だるい。疲れちゃったみたい、昨日眠れなかったからな・・・」 
「大丈夫?何か、飲み物もってこようか?」 

「・・・」 
山本は少し黙ってけだるそうに目をしばたかせていた。 
「山本君、どうしたの?大丈夫?」 
英子は聞こえるとも聞こえないともつかないような声で山本の耳元でささやいた。 
「昨日、寝てなかったから疲れちゃったんだね?」 
「それなのにウイスキー飲んだから酔っ払っちゃったんだね?」 
英子は山本の耳元でささやき続けた。 
「疲れちゃったんだよね・・・」 
「じゃ、少し休んでいていいよ」 
「ゆっくりしてね・・・」 

山本はしばらく虚ろな目つきをしていたがやがてだらしがなく口を開いたまま 
かすかな寝息をたてはじめた・・・ 

英子は山本の部屋で独りきりになった。 
ラジオのボリュウムを少しだけ落として、山本のパソコンを見てみた。 
電源は落ちて画面は真っ暗になっている。 
先ほど、山本の操作を見ていたため簡単に立ち上げる事ができた。 

英子はパソコンが立ち上がるまでの間に山本の机周辺をあさってみた。 
いろいろなものがあったが、英子の写真につながるようなものはなかった。 
しばらく、机の中をあさっていると薬の袋を発見した。 
処方された人は女性の名前になっている。名前から判断すると山本の母親のものらしかった。 
なんで、山本がの薬を持っているのだろうか? 
薬は薬局のものではなく、病院で出しているもののようだった。 

えっ!!! 
英子は病院の名前を見て驚いた・・・ 

○○病院精神科が処方した薬だった。 
まっまさか・・・ 
英子は急いで中身を確認してみた。 
そこには、英子が医師から処方された睡眠薬と同じ物が入っていた。 
しかし、それは英子のものは10mだったが20mのものだった。 

なぜ、山本がこんなものをもっているのか? 
何故、山本のお母さんがこんな薬を処方されていたのか・・・ 
英子には分からなかった。 
山本がしきりに水割りを勧めていたのは私に睡眠薬を盛るためだったのか・・・ 
英子は背筋に冷たいものが走っていた。 
かすかに体も震えていた。 

英子は何も考えずに薬を袋ごとかばんにしまった。 
そして、机を再び探ったが、それ以上なにもあやしいものはみつからなかった。 

パソコン、チェックしなければ・・・ 
山本の事だから、絶対に他の場所に画像を保存してあるに違いない。 
CDRもたくさんある。これら一つ一つをチェックしていたらやがて山本も 
目を覚ましてしまうだろう。 

英子はまず、ドライブをチェックしてみた。 
山本はよっぽどの間抜けだろう。 
隠しファイルを表示するにしたら 
女の名前のファイルがいくつか出てきた。 
それらは、藤原何某とか藤本何某などの芸能人の名前が書いてあったが 
その中に、村上の名前と英子の名前があった。 
単純な男でよかった。 
英子はそのファイルの中身を確認してみた。 
.jpgの画像が大量にあった。 
思ったとおりだ。 

英子は画像を開いた・・・ 
驚きのあまり声にならなかった・・・ 
英子は全ての画像を開いて確認した。 
時間がたつのも忘れて・・・ 
もちろん、村上のファイルも開いて確認した。 

英子の顔は青ざめ、息も苦しかった。 
ディスク以外のCDRも確認してみなければ・・・ 
英子はCDRを一枚づつ確認した。 
ほとんどのCDRはアダルト画像をPCで取り込んだものなどが焼き付けられていた。 
全てのCDRを確認してみた結果、やはり、英子と村上の画像が焼き付けられた 
CDRが1枚あることが確認できた。 

英子はそのCDRもかばんにしまった。 
まだ山本は寝息を立てている。いつしかあたりは日がかげりだしていた。 
英子はこれ以上のバックアップはないと判断して、Windowsの 
スタートボタンを押してWindowsの終了をクリックした。 
そしてOKボタンをクリックした。 
その間、英子はCtrlキーを押しつづけた起動メニューが表示されると 
Command prompt を選択し、Enter キーを押した。 

そして画面に表示された指示に従い操作を進めた・・・ 

その間、英子の瞳からは涙が止まらなかった・・・ 



俺は英子の部屋でこの夏から今日までの出来事を順を追って説明された。 
話を聞きながら自分の顔が青ざめていくのを感じた。 
冷や汗も流れているのが分かる。 
俺は、つい先ほどまで信じていた山本が英子をレイプしたということが信じられなかった。 
そ、そんな、親友だと思っていた山本が英子をレイプした・・・ 

「あ、あいつ、休み明けのゼミで俺と話した時に英子と付き合っていると 
俺に断言していたけど、あれはでたらめか?」 
「・・・あの人、頭おかしいよ」 
「えっ、あぁ、あいつ、ちょっと変わっているけども」 
英子の話がいまいち信じられない俺はいまだに山本の肩を持とうとしていた。 

「変わっているどころじゃないわよ!狂っているわよ!」 
英子は再びヒステリックになってきた。 
俺は正直少々うんざりしていた。こんな時間に呼び出されて少々被害妄想 
気味な英子の話を聞くのはつらかった。 
確かに、別荘の帰りに英子は山本に無理やり襲われたのかもしれない。 
しかし、それは山本が何もしないからとか言う言葉を信じてのこのこと 
ラブホについていった英子の責任でもある。 
ホテルに入って何もしない男がいるわけがない・・・ 

やられてしまったという事実はかわいそうだとは思う。 
しかし、少々強引だったかもしれないが、英子のそれはレイプでとは言わないと俺は思った。 
それに、もしかしたら、英子被害妄想がこうじて精神病になってしまったのでは? 
はっきり言って今の英子の姿は病気そのものだった。 
知らない人が見たら精神を病んでいると思うだろう。実際俺も英子の変わり様には驚いた。 

それに、英子はモトカノとは言え、今では俺の心は美香にあり、夜のこんな遅くまで 
愚痴のような話を聞かされて疲れていた。 
普段なら既に寝ている時間帯である。ここまで聞き出すのにかなりの時間を要していた。 
じきに夜も明けるだろう・・・ 

「で、でも、山本は何で急に寝むってしまったんだ?」 
俺は疑問を口にした。 
「ま、まさか・・・英子・・・」 
「そうよ、秀樹の思っているとおりよ」 
「お、おい、いくらなんでもやりすぎじゃないか・・・」 
ここまでやるとは・・・英子のほうが狂っている。 
俺はそう思った。 
「お、おい、悪い事は言わない、医者に見てもらったほうがいいんじゃないか?」 

「なんで、そんな事言うのよ!」英子は再び狂乱するように言った。 
「だって、睡眠薬盛るだなんて、お前どうにかしてるぞ!」 
「しかも、山本に酒まで飲ませたんだろ」 
「常識で考えろよ、酒と睡眠薬一緒に飲んだらどうなんだよ!」 

「医者も言っていたんだろ、睡眠薬と酒を一緒に服用すると危ないと」 
「だって、効くかどうかなんか分からなかったからよ」 
「・・・」俺は黙り込んだ。やはり、英子はどうかしてる。 
「そんな顔しないでよ、まだ、私のこと疑っているでしょ」 
「別に、疑うとかそんなんじゃないよ」 
俺はもう、どうでもよくなった。疲れたし、眠い。 
それに今、俺が愛しているのは美香だった。 

「ごめん、もう朝になるし・・・俺、親に何も言わずに出てきたからやばいよ」 
「車で来てるし、うちの親が厳しいのは知ってんだろ」 
「英子が酷い眼にあったことはかわいそうだと思うよ、でも、離れていったのは 
英子のほうだろ」 
「確かに、酔っていたとは言え美香と寝てしまった事はすまないと思ってるよ」 
「でも、もう、今は、俺、好きなのは美香なんだよ」 
俺は一気にまくし立てた。 

「・・・」 
英子は顔を真っ青にしてぶるぶると震えていた。 
俺は少々言い過ぎてしまったかと思ったが、英子に変に気を持たせてもいけないし、 
いずれは告げなくてはならないことなら早いほうがいいと思った。 
確かに、俺は英子の事を愛していた。 
しかし、今では違う。俺が愛していたのは村上だった。 

「・・・」 
「・・・」 
お互いにらみ合うようにしばらく口を開かなかった。 
英子もつらいだろうが俺も非常につらい。 
俺は英子とやり直したくて必死にコンタクトを取ろうとしていた。 
しかし、携帯は着信拒否にされる、部屋を訪ねても留守にしている。 
そして最後には合鍵も変えられてしまった。 
俺は英子に連絡のとりようがなくなっていた。 

そんな中で、休み明けに山本に英子との仲を取り直してもらおうと思い、 
やつに仲直りの申し入れをしたところ英子と付き合っていると告げられた。 
当然俺は落ち込み、次第に村上との付き合いにのめり込んでいった。 
村上は非常に俺につくしてくれた。今まで付き合っていた英子が何も 
してくれなかったのに対し村上は何から何まで面倒を見てくれた。 
村上はとても人には聞かせられないような過去も打ち明けてくれた。 
次第に俺は村上の事を心から愛するようになっていた。 
今、俺の事を心底信頼してくれているのは村上だ。 
俺の事を心底愛してくれているのはまぎれもなく村上だった。 

はじめのうちは鶏がらなどと呼んで侮蔑をしていたが、最近ではボディーボードも 
やめて色黒に焼けた肌や肌荒れも回復しつつあった。 
そして海に行くのをやめて以来筋肉質だった体型も徐々に丸みを増して女らしくなってきていた。 
さすがに、いきなり体型が変わるわけがないが、今では以前ほどカラスや鶏がらを 
イメージしなくなってきていた。 
村上は外見を努力して俺の好みに合わせてくれようとしていた。 
性格は付き合ってみたら思っていた以上だった。 
今では、村上以外の女は全く考えられなかった。 

「これを見てもそんなことまだ言っていられるの・・・」 
英子は強張った表情のまま引出しの中から何か取り出してきた。 
俺にはその動作がスローモーションのように非常にゆっくりと感じられた。 
「な、なんだよ、それは・・・」 
俺は英子の手にあるものに目をやった。 

英子の手には白い小さな紙袋が乗せられていた。 
「それが一体なんなんだよ・・・」 
「手にとって見れば分かるわよ」 
俺は恐る恐るそれを手にとって見た。 
そのものが恐かったわけではなく、英子の表情が異常でそちらのほうに恐れをなしていた。 

「こ、これは、さっき英子が言っていた山本が隠し持っていた睡眠薬か?」 
「そう・・・」 
「別に、こんなもん見たからっておどろかねぇよ。山本が英子の事眠らせようと 
して睡眠薬を盛っていたんだろ?」 
「悪いけど、もう、英子と山本の事に俺の事巻き込まないでくれよ」 
「警察にでもなんにでも行って訴えてくればいいだろ」 

「じゃ、これを見て!」英子は再びヒステリックになっていた。 
そう言って英子は自分のパソコンを立ち上げた。 
俺には、その時間がやけに長く感じられた。 
疲れもピークに達していた。 
英子は一体何を考えているのだろうか? 
俺はもう、英子とは切れて村上と付き合っている、 
もう関係のないことに巻き込まれたくない。 

英子はCDRを取り出してウインドウを開き、その中の画像を開いた・・・ 
それは英子の裸の画像であった・・・ 
「なっなんだよ、これは・・・」 
「山本が持っていたのよ」 
「だからって、なんで俺にこんなもん見せつけんだよ・・・」 
俺は少々動揺していた。 

「他にもあるから全部見てから言ってよ」 
英子は涙目になりながら言った。 
画像を一つづつゆっくりと開いていく。 
英子の裸の画像がたくさん現れた。 
そのうちに、英子の局部に男のモノが挿入されている画像も出てきた。 
おそらく、山本のものだろう。 
俺は正直言って見ていられなかった。 

いくら分かれたとはいえ付き合っていた女のハメドリ画像 
など直視できるものではなかった。 
しかし、英子はかまわずにどんどん画像を開いていった。 
次第に射精しているシーンも出てきた。 
英子の中に出している画像、そして、腹の上や胸に、顔に 
かけている画像が出てきた。 

「なに考えてんだよ、こんなもん俺に見せて!」 
俺ははっきり言って吐き気をもよおしていた。 
こんな画像を見せ付けられてまともでいられる奴などいるのだろうか? 
「最後まで黙って見ていてよ!」 
英子は怒鳴りつけた。 

俺は再び画面に眼をやった。 
英子の顔シャのアップになった・・・ 
目は半開きで口はだらしなく開いていた。 
「この次よ・・・」 
英子はゆっくりとアイコンをクリックした。 
「あっ!!!」 
俺は我が眼を疑った・・・ 

そこには、俺が写っていた。 
やはりだらしなく開いた口がまるで死人のような顔をしていた。 
それだけでなく、俺は英子と二人並んで撮影されていた・・・ 
そしてその写真は紛れもなく、うちの別荘で撮影されたものに 
間違いがなかった・・・ 

「なっ、なんなんだよこの画像は!何でこんな写真があるんだよ!」 
俺は絶句した。 
訳がわからなかった。 
俺と英子は間違いなく、うちの別荘の俺と英子が停まった部屋のベッドに 
二人並んで寝ているところを撮影されていた。 
もちろん、2人とも全裸であった。 

「ま、前の画像も・・・」 
俺は震える手で英子の手からマウスを奪うと先ほどの画像をもう一度確認してみた。 
英子のハメドリ画像に写っているシーツも俺と英子が並んで写っている写真のものと 
一致していた。 
どこにでもあるようなシーツであったため、はじめのうちはそれが、うちの別荘の 
ベッドのものとは気がつかなかった。 
しかし、英子が山本に犯されている写真は間違いなく、別荘のベッドの上でのことだった。 

「まっ、まさか、あいつが・・・」 
俺は衝撃と寒気で額から脂汗が流れ出ていた。 
「お、俺も、やつにはめられたのか・・・」 
「あ、あいつ、あん時に、酒に睡眠薬を仕込んでやがったのか?・・・」 
「俺、だまされていたのか・・・」 

「じゃ、お、おれ・・・まだ英子となまでやってなかったのか?」 
「なかだししたのは俺じゃなかったのか?」 
俺は急に憎しみがこみ上げてきた。 
親友だと思っていた山本が俺たちの酒に睡眠薬を仕込んで 
俺の大切な英子を強姦していただなんて・・・ 
それに、こんな写真まで撮影していたとは・・・ 

「え、英子、英子・・・」 
俺は我慢できなくなって英子を抱きしめた。 
「ご、ごめん、ごめん・・・」 
俺は英子の事が好きだ!たまらなく好きだ! 
英子が大切だ!許してくれ! 
頭の中は混乱していた。俺は心の底から英子にすまないと思った。 

英子は俺がはじめての相手だった。 
俺は、英子と将来を共にしてもいいかなと思った時もあった。 
その英子が山本みたいな卑劣な野郎にレイプされてしまった・・・ 
俺が守ってやらなけりゃならなかったのに、 
俺がささえてやらなきゃ何もできなかった英子が・・・ 
俺がついていながら・・・ 

「ごめん、ごめん・・・」 
俺の口からはそれしか出てこなかった。 
いろいろと言ってやりたかったけれども声にだして言えなかった。 
つらかっただろう、ゆるしてくれな。 
心の中ではいろいろな思いが込み上げてくるが声にならない。 
いつしか俺の目は涙でぐしょぐしょになり 
喉から出てくるのも嗚咽のみであった・・・ 

俺と英子は抱きあったまま泣いていた。 
いくら泣いても泣き尽くせないほどせつなく悲しい思いが溢れ出てきた。 
殺してやる!生かしておく事はできない! 
俺の心の中には山本に対する殺意が芽生えた。 
死体さえ見つからなければ、あんな野郎が独り行方不明になろうが捜査など 
されるわけがない。 
あいつを殺して夜のうちに別荘の庭の地中深くに埋めてしまえば見つかりっこない。 
念入りに深い穴をほってセメントで固めてしまえば大丈夫だ! 
俺は真剣にそう思った。 

「あの野郎生かしておけない」 
俺はようやくの思いで声に出した。 
「まだ、他にも画像があるんだろ!」 
俺は殺気立って英子に言った。 
「あるけれども・・・見ないほうがいい・・・」 
英子は怒る俺に恐れをだいたのかそんなことを言った。 

俺は静止する英子にかまわず画像を開いた。 
再び俺と英子が寝ている写真などがクローズされたりひいて撮っていたりなどの写真が続いた。 
その後、村上の画像も現れた。 
「うっ・・・」 
やはり眠った村上の裸の写真だった。 
この時、英子に対する愛しさと村上に対する愛情が交叉した。 
英子は村上の写真を見ることにより俺の心が村上に戻るのを恐れていたのか? 

そんなことを考えもしたが、村上の画像が出てきた事で俺は薄々感づいた。 
村上との事件もやつがでっち上げたのか・・・ 
俺は深く呼吸をすると、続く画像を開いた。 
そこにはやはり思ったとおり奴が村上を犯している画像が続いた。 
この時は、奴は村上になかだしを1回やっただけでハメドリは終わっていた。 
その後は英子の時と同様に俺と村上を並べて寝かせた上で撮影をしている。 

やはり、英子と別れる原因となった村上との事件も奴のでっちあげ 
ということが判明した。 
あの野郎!俺は真剣に奴に対して殺意を覚えた。 
この画像を見るかぎり、俺も英子も村上も被害者である。 
加害者はたった一人、山本だけである。 

「ねぇ、もう、終わりにしておきなよ」 
英子は再び俺を制止しようとした。 
しかし、全てを見なければ気がすまなかった。 
これ以上の衝撃はもうないだろう。 
奴のやらかした悪行を全て見届けなくては気がすまなかった。 
俺は画像をさらに開いた。 

「うっ・・・」 
そこには信じられない画像があった・・・ 
俺は我が眼を疑った・・・ 
奴は一体何を考えてこんな写真を撮影したのだろうか? 
奴は正常な人間じゃない・・・ 

そこには、俺のちんちんをくわえている山本の画像があった。 
一体、この画像の意味している事はなんであろうか? 
次の画像では奴がVサインをしながら俺のモノをくわえていた。 
これは俺に対する勝利を焼き付けるために撮ったものだろうか? 
俺は血の気がひいていくのを感じた。 

次の画像ではこともあろうか、奴が俺の半開きの口に汚いちんちんを 
押し込んで撮っていた。 
俺の口に押し込もうとしている写真はその一枚のみであった。 
しかし、次の写真は俺にとっては死にたくなるほどの衝撃であった。 

奴は半開きの俺の口の中に精液を射精していた・・・ 
奴が何のためにこんな事をしたのか分からない。 
理解できなかった。 
隣にいる英子も顔が青ざめていた。 
俺の体は小刻みに震え、吐き気をもよおしていた。 

次の写真は精液まみれになった口元をアップに撮影した写真・・・ 
次はそれをひいて撮った写真・・・ 
俺は、今でも奴の精液が口の中に残っているような気がしてたまらなかった。 
画像を見てから、まだ唾液を飲み込んでいないことに気がついた。 
気持ち悪い。もはやそれを通り越していた。 

さすがに奴は肛門にぶち込む事まではしなかったようだ。 
いくらなんでも、そこまでやったらばれると思ったのか、 
それとも撮影はしなかったのか、撮影はしたがこのCDRに 
焼き付けなかったのかは分からない。 
しかし、肛門は無事だと俺は信じている。 
というよりも絶対にやられていないと信じている。 

それで、画像は終わっていた。 
これで、奴がまともな人間では無いと言うのがよく分かった。 
酒に睡眠薬をしこんだだけでなく、英子をレイプして画像として 
残しておき、さらに、裸の俺と英子を並べて撮影するあたりが 
奴の異常さを物語っている。 
それどころか、自分の彼女昏睡レイプしその後、再び俺と並べて 
撮影し、俺に罪をかぶせたり、俺のちんちんをくわえたり 
俺の口の中に射精したりなど通常の人間の考える行為ではない。 

俺は、この時、既に冷静さを失っていた。 
昏睡中に英子が山本にレイプされた事もさることながら 
俺自身もおもちゃにされていたことに憎しみを抱いた。 
村上をレイプした事を俺の仕業に見せかけようとしたことにも 
腹を立てた。 

その時、インターホンがなった。 
「えっ?こんな時間に一体誰だろうか?」 
俺は言った。 
ふと窓の外を見ると空は明るんでいた。 
いつのまにか、夜は明けていた。 

「えっ・・・こんなに早い時間に・・・」 
確かに、初冬とはいえ夜は明けていたがまだ人が尋ねてくるには早い時間だった。 
英子は少々不安そうな顔をしていた。 

「警察です、こちらは佐伯英子さんのお宅ですね」 
俺と英子は体が凍りつくくらい衝撃を受けた。 
「はっ、はっい・・・」 
英子は声にならない返事をした。 
いったい警察が何故?こんなに早い時間に・・・ 

俺はもしや、山本の身になにかあったのではないかと感じた。 
睡眠薬と酒を一緒に摂取したため命を落としたとか・・・ 
しかし、英子が山本に薬を盛った事を知っているのは英子だけである。 
万が一、山本が命を落としたとしても調査するのに何日もかかるはずだ。 

たとえ、奴が死んだとしてもそれは自業自得である。 
英子や俺、村上にこんな酷い事をしているのだ。 
この山本の部屋にあった、睡眠薬とCDRが動かぬ証拠になるだろう。 
これらが物証の決め手になる。 
あんなやつ、死んで当然の奴だ。 

何がなんだか訳がわからぬうちに警察は英子の部屋の玄関にまで来た。 
この時、俺はこの現場に居合わせたが、極度の緊張のため実際にあったことが 
まるで夢のような感じがした。 
先ず、警察は朝早くの訪問を詫びた。 

まず、英子に対して傷害と窃盗で被害届が出ていると捜査官は言った。 
俺は、耳を疑った。何故、何故英子が訴えられるのだと・・・ 
つきましては、重要参考人として署にご同行願いたいと。 
捜査官は俺にキミは彼女の同居人かと聞いたが、 
俺は「いいえ」としか答える事ができなかった。 

捜査官の説明によると、夜、山本の父親が帰ってくると、息子が部屋で寝ていたが、 
どうやら様子がおかしい事に気がついた。 
酒を飲んで酔っているようだが、様子が変だと。 
脈をとったり瞳孔を調べた結果、薬物を使用しているものと思った。 
息子が薬物を乱用したとなると仕事にも都合が悪いため、様子を見ていたところ 
山本が意識を取り戻したので事情を詰問したところ、 
飲酒しながら英子の料理を食べたら意識を失ったと。 
山本はとっさに、部屋を調べて無くなっているものがあると父親に言った。 

それを聞いた山本の父親が被害届を警察に出したらしい。 
山本はその足で、病院に連れられていき薬物検査を受けたそうだ。 
その結果、睡眠薬が検出されたと。 

あくまでも、任意同行をお願いするが、断ってもよいとの事だった。 
断った場合は後刻逮捕状をとることもあるとのことであった。 

英子は力なく同行すると言った。 
確かに、英子は山本に薬を盛り、山本の部屋から奴のものを 
勝手に持ち出していたことは事実だったからだ。 
警察は、俺に、英子が同行する事になったので、 
キミは帰ったほうがいいと言った。 
俺は黙ってその言葉に従った。 

その後、英子は警察に山本にレイプされたことを告げ、その際に撮影された 
写真などを破棄するためにCDR等を持ち帰ったと。 
しかし、日本は法治国家のため、自力救済は法制度上認められていない。 
英子のやった事は犯罪になるといわれたそうである。 

この後、山本の悪行がだんだんと明らかになるにつれ、 
山本の父は英子に対する訴えを取り下げ、 
山本を心神喪失状態にあったということで緊急入院させてしまった。 
そして、山本の父は英子と村上と俺に対して和解の申し入れをしてきた。 

俺は、山本の行為は断じて許しがたいと思ったが、 
英子は大袈裟にしたくないと言って和解してしまった。 
英子の場合は、山本に対して傷害罪と窃盗、器物損壊などの疑いもあったからだ。 
そして、村上の場合も、当時、山本と付き合っていた事もあったし、準強姦罪で 
告訴する事も可能であったが結局和解した。 

俺の場合は山本の事を強制わいせつ罪で告訴する事も可能であったが、 
その際、英子や村上にも精神的な負担がかかる事、 
肝心の山本が心神喪失で無罪になる可能性が高いと弁護士に言われたため 
公訴で争っても奴が有罪判決を受ける可能性が低い事からあきらめることにした。 
たとえ、山本が心神喪失でなくても山本の父親の影響力でそのように 
鑑定される事は容易に想像できた。 

和解の内容は簡単なものであった。 
俺の場合は、山本の俺に対する行為を 
刑事上も民事上も訴える権利を放棄するというものであった。 
その対価として、和解金と慰謝料を受け取った。 
俺の場合でもかなりの額であった。 

実際に山本の様子がおかしかったのは今考えると思い当たる節もある。 
また、後で知ったのだが、山本の母親は現在精神病で入退院を 
くりかえしているようである。 
数年前から精神を病んでいるようで、山本のの不在が多かったのも 
それが理由であった。 
山本が昏睡レイプに利用した睡眠薬も、山本のに処方されたものだった。 

俺は、自分の怒りよりも村上の気持ちのほうを優先させた。 
その結果、上記のような結論にたどり着いた。 
当然、英子の気持ちも考えた。 
こんな、惨劇は早く忘れてしまったほうが彼女のためでもある。 
裁判にかかる精神的プレッシャーを考えるとこれ以上の追求は 
しないほうがいいと判断した。 

そして俺は和解調書に署名捺印した。 
もう、これで山本を犯罪者として追及することはできなくなった。 
果たしてこれでよかったのだろうか? 
山本の父は、最期の俺との和解がすむと、本当に申し訳なさそうに俺に謝った。 

山本の父は非常に立派な人だった。 
自分の息子の不始末のため、その職を辞任し 
俺たちにたいしてお詫びの行を毎日のように続けた。 

この時、俺は既に英子とは何も接触していなかった。 
もし、あの時、俺が怒らずに英子の話をはじめから 
全て聞いていたらどうなっていたのだろうか? 

確かに、英子に対して、あの時と同じ感情を抱いただろう。 
そして英子を抱きしめ、英子に謝っていただろう。 
俺がまもってやれなくてごめんと。 
しかし、俺の気持ちは変わらなかっただろう。 
俺は村上を愛している。 
その気持ちは嘘偽りがない。 

あの日、英子が警察に同行した後、俺は村上の家へと車を飛ばした。 
電話ですぐに行くと村上に告げたが、内容は電話で話す事ではないと 
判断し、村上の自宅に向かった。 
首都高と第三京浜、横浜新道を利用したらそんなに時間はかからなかった。 

村上に会って、俺は事実関係をかいつまんで話した。 
山本が英子にした仕打ち、山本が村上を昏睡レイプし 
俺にその罪をなすりつけたこと。 
そしてその後、山本は英子をラブホに連れ込みレイプしたこと。 
最後に、英子が睡眠薬を山本に盛り山本のレイプの証拠を 
盗み出して警察につかまってしまって事を。 

村上は英子に対して同情を示した。 
自分も山本に同じ事をきっとされたからだと。 
俺はわが耳を疑った。 
「えっ?今なんて・・・」 
「実は、ゼミ合宿の帰り、秀樹が車を降りた後、私、山本にお茶を勧められたの。」 
「それを飲んでしばらくしてから眠くなって寝てしまったの」 
「目が覚めた時は東名を走っていたけど、何か、アソコに違和感があって」 
「私はトイレに行きたいから目がさめたと思って、山本君ずーと運転していたから 
疲れているだろうと思って、ホテルに言ってもいいよって言っちゃったんだ」 

「ま、まさか・・・」 
「多分、寝ている間に、やられていたのかも・・・」 
「あいつ、もしかしたら昏睡レイプの常習犯か・・・」 
「そうかもしれない。もともと陰湿な感じだったし」 
「み、美香、大丈夫か?震えているぞ・・・」 
「こ、こわい・・・」 

山本と村上がはじめて関係を持った時に村上が昏睡レイプされたかどうかは 
今となってしまってはもう分からない。 
この時、山本はデジカメを持っていなかったのか、使用しなかったのかはわからない。 
ただ、CDRの画像にはその時の画像はなかった。 
寝ている間の事は分からない。その後、ホテルに行ってやったのは村上から誘った 
訳だし、合意の上での行為である事は間違いはない。 
しかし、その時、トイレに行きたいと村上が思ったのは昏睡レイプされたのが原因かもしれない。 
山本がそんなことをしなければ村上も山本をホテルに誘うこともなかっただろう。 

過去の事はどうでもいい。 
やはり、俺は村上の事を愛している。 
英子には悪いが、英子はもう既に過去の人である。 
何か力にはなってやりたいが、俺には村上のほうが大切だった。 
今は村上のことをケアしてやりたい。 
震える美香を抱きしめながら俺はそう思った。 

その後、英子の取調べが進むにつれ山本の罪状が明らかになり 
山本にも捜査の手が伸びた。 
そこで、山本の父は山本を緊急入院させ、山本を世間から隔離してしまった。 
山本の父はそのような力を持った人物ではあったが、 
事実関係が明らかになると自ら職を辞して、俺たち被害者に詫びて回る日々を送った。 

英子は何度か山本の父の訪問を受け、最終的には和解に応じた。 
村上もいやな事は早く忘れたいとそう言って和解に応じた。 
俺は最後まで、山本に対する復讐をしたくて和解には応じなかったが、 
今は全く連絡をとらなくなった英子と俺の恋人としてこの先ずっと 
側にいたい村上のことを考えると和解に応じたほうがいいと思った。 

山本の父は何度も何度も俺に詫びた。 
自分の父親よりも年上の社会的地位の高い人が 
息子の不始末を反省し辞職し、毎日のように被害者である 
俺たちを訪問し詫びている、その姿に俺は少なからずとも 
心を打たれた事も事実だ。 
悪いのは山本であり、この人ではないのに・・・ 

山本の父の話によると、山本の様子がおかしいのはうすうす感じていたと。 
山本のは精神病で入院と退院を繰り返していた。 
家にいる時は抗鬱剤や睡眠薬などで療養していた。 
その際、薬の管理をきちんとしておけば、このような事件は防げた。 
また、息子が精神的に参っていたのはの過度の期待とやはりが精神病に 
なってしまったことが原因と考えられる。 
全ては、父親である自分の監督不行き届きから起きてしまった。 

息子は病気である、きちんと管理して治療をするので見守って欲しい。 
そのような事を言っていた。 
息子の罪を自分が全て被るつもりでいるのだろう。 
俺は、実際に山本が病気で責任能力が問われた際に無罪になることもありえると 
聞いていたし、大切な村上もこの問題でこれ以上苦しみたくないと言っている。 
こうして俺は和解に応じたのだった。 

俺と村上は和解に応じて得た慰謝料を全てを忘れるために 
2人で行に行こうと計画した。 
に出てぱーと使ってしまおうと。 
しかし、使い切るのには十分すぎるの額であった。 

俺と村上は南の島とヨーロッパの2箇所に行き、 
食事に買い物いろいろと散財した。 
元からなかった金と思えば惜しげもなく使えた。 
先ではお金をつかえば十分楽しめる事も学んだ。 

そして、俺と村上は今も続いている。 
これからも続けていくだろう。 

終わり 

>>300 
ありがとう。 
幸せに頑張ります。 
しかし、英子の事も心のどこかで非常に気になっているのが本音です。 
愛しているとかそんなんじゃなくて、気になるのです。 
無事で元気でいるのかとか・・・ 

>>301 
その後、英子とコンタクトはとっていません。 
裁判沙汰にはならなかったので前科もついていません。 
それ以上の事は分かりません。 
幸せになってくれているといいのですが・・・ 

事件後、英子と連絡をとらなかったことは私にとってもつらい選択でした。 
もし、フォローしていたら、村上とうまくやっていけなかったと思います。 
肉体関係を持たなくても精神的な浮気になると思います。 
村上はそういうところに敏感ですので彼女の事を裏切れなかったのです。 

>>308 
英子と比べたら鶏がらです・・・ 
しかし、夏の事件から比べたら筋肉質だった体に柔らか味と丸みが出てきました。 
俺は、体だけでなく、村上の全てを愛しています。 
まぁ、村上とのセックスはやめられないのも事実ですが・・・ 

>>317 
おしゃるとおりです。 
だから私も彼を許しました。 
彼の俺のモノをくわえて勝ち誇ってVサインした画像は衝撃的でした。 
そこまで俺のことを恨んでいたとは・・・ 
おそらく、この年にもなって人をぱしりにしていただなんて最低です。 
今では、山本の父の言葉を信じて彼が全快する事を心から願っています。 

>>316 
英子が酷い目にあったのは私のせいでもあります。 
私が山本をあそこまで追い込んだのです。 
私に対する復讐の矛先がが英子に向かってしまったのです。 
山本の父は本当に立派な人でした。 
きっと英子の心の傷に対するフォローもきちんとしてくれてると思います。 
いくら辞職したといってもいい病院を紹介するとか万全の体制でケア 
してくれていると思います。 

>>322 
あの時は全く思いもしませんでした。 
飲んで酔っ払って(かなり飲んだが) 
中央線を往復した事もあったし、 
寝込む事はよくあったので・・・ 
しかし、あばれたりなどのことはなかったからレイプは信じられませんでした。 

>>327 
怒る気持ちは分かります。 
確かに、英子に対するフォローが全くなされていませんでした。 
自分の体面の事ばかり考えて村上が騒ぎ立てる事に恐れをなしていた卑怯者です。 
親が厳しい事を理由にしていたのも事実です。 
海外行したのは、村上の心情を考えて、そうしたのです。 
これは悪い事だとは思っていません。 


出典:【鶏がら】その男、昏睡中につき2【巨乳
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