インド北部のレイプ事件 最下層の少女が標的に2012.11.509:05(1/3ページ)[性犯罪]レイプ事件急増への抗議デモで、制止に入った警察隊に向け、怒りの声を上げる女性=10月15日、ハリヤナ州ロータク(AP) インドでは、北部ハリヤナ州で被害者が焼身自殺するなどのむごたらしいレイプ事件が相次いで伝えられ、これまで議論されることすらまれだった、女性に対する暴力への問題意識が高まった。
レイプ被害者は身分制度最下層の少女であることが多い。
近年のレイプ事件の急増は、女性の社会進出が要因の一つだと指摘される。
きょうのテーマは「インド北部のレイプ事件」とした。
(SANKEI EXPRESS) ■最下層の少女が標的 ハリヤナ州はデリー首都圏に隣接しており、州内の町村はニューデリーからそう遠くないところにある。
英BBCなどによると、9月9日、州内の小さな村で、16歳の少女が大勢の男たちに襲われ、3時間近くにわたり7人にレイプされた。
少女はインドの身分制度カーストの最下層民ダリットの出身だった。
「しゃべったら殺すぞ」と脅され、黙っていた。
だが、男たちの1人がレイプの様子を携帯で撮影。
村中に流され、被害者の父親の目に触れた。
父親は9月18日、殺虫剤を飲んで自殺した。
 10月6日、別の村のやはり16歳のダリット出身の少女が、昼食を取ろうと畑から自宅に向かっていたところ、2人の男たちに別の家屋に連れ込まれ、レイプされた。
もう1人の男が家屋の前で見張っていた。
叫び声を聞いた父親が現場に駆けつけたときには、男たちの姿はなかった。
住民らが集まってくると、少女はその場を逃れ、親戚(しんせき)の家へ行って灯油をかぶり焼身自殺した。
センセーショナルな事件は全国的な話題となり、市民団体などが、暴力と取り締まり当局の無策に抗議の声を上げた。
 ■原因はグラビア!? ハリヤナ州は保守的な土地柄で、多くの町村は昔からあるそれぞれの「評議会」が実質的に支配している。
男性だけがメンバーになれ、カーストには厳格だという。
評議会支配がレイプ多発の土壌を作っているとの指摘もある。
評議会長老らのレイプ事件に対する認識はどんなものなのか。
いくつかの発言が伝えられている。
 「最近は新聞や雑誌、テレビに半裸の女性が氾濫し、青年を堕落させた。これがレイプ事件の原因だ。ここはインド。欧州のようになってはならない」 「私は女性は16歳までに結婚すべきだと考える。夫婦間の交渉で満たされればレイプ事件は起きない」。
インドでは「幼児結婚」が広く行われ、国際的に問題視されている。
 インドの与党、国民会議派のソニア・ガンジー総裁(65)はハリヤナ州に赴き、「レイプ事件を強く非難する。罪を犯した者は厳しく罰せられるべきだ」と述べた。
だが、国民会議派の地元幹部の認識は、評議会の長老たちとほとんど変わらないようだった。
レイプの90%は同意の上」と発言して、市民団体などの猛反発を買った。
 ■女性の社会進出に反感も インドでのレイプの報告件数は2006年の1万9300件から11年には2万4600件に増えた。
ハリヤナ州では同じ期間に608件から733件に増加している(州内で1日2件の届けがあったことになる)。
 被害者が声を上げるようになったことも一因とみられるが、米ニューヨーク・タイムズ紙は、専門家の話から女性の社会進出も要因の一つだと指摘している。
経済成長に伴い、より多くの女性が高等教育を受け、仕事を持ち、伴侶を(親でなく)自分で決めるようになった。
これに対し、自分たちの領域を侵されたと感じる一部の男性がストレスを募らせているというのだ。
 インドの市民団体は10月15日、ニューデリーに近い州内のロータクなどで、急増するレイプ事件への厳格な対応を求めてデモを行った。