足にジンジンした独特な疲労を感じながらホームで電車を待った。
なんで素人の俺がボロクソに怒られにゃならんのだ!だの素人相手に説教を垂れる消防士の文句をブツクサと頭の中で呟きながら何度も溜息をついた。
俺が電車に乗る駅は帰宅ラッシュ時にかなり込み合う。
その日は夜9時頃で、ラッシュは過ぎていたがホームはそれなりに混雑していた。
普段は、夜遅くまで仕事をしているので夜9時に帰途につけるというのは久しぶりだった。
ただ、訓練後に発生したクレーム処理や本来の仕事をこなして疲労困憊。
身体と精神はかなり疲れていたのだが、大変だった一日を乗り越えたという達成感と、早めの帰途につけた開放感で、若干ほわほわした状態だった。
程なくしてホームに電車が入ってきた。
最前列にいた俺は電車に乗り込んですぐに空席を探した。
空席を見つけだし、一目散にそこへ向かう。
新幹線のように進行方向に向かって2人掛けの座席があるタイプの車両だった。
人数があまり収容出来ないタイプなので東京のような大都会ではあまり見かけないが俺の地域ではこちらの座席タイプの方が多い。
理由はわからん…。
俺が窓際の席に座ると後から入ってきた人もそそくさと座席に座り始める。
そして、後からやってきた一人の女性が俺の隣の席に座った。
………。
俺は女性を避けるように窓際に寄った。
自分より少し年下だろうか。
随分と小柄な女性だった。
ただ、思いっきり具合が悪そうで、髪はグシャグシャに乱れていた。
そして何より気になったのがしばらくして漂ってきた強烈な酒臭さである。
夜9時の時点で既にかなりの酒を飲んでいたらしい女性は、口に手を当てて前屈みになり、ハァハァ息をしていた。
かなり苦しそうだった。
…。
まぁ、所詮他人である。
むしろあまり構わない方が相手の為だと思い、横目でチラリと女性の状態を確認したあとはガン無視を決め込んだ。
スマホを取り出し、適当にネットを眺めていた。
そして電車が動き出して10分が経った頃、事態は起こった。
横でうずくまる女性が小さくえずき出したのだ。
二人掛けタイプなので周りの乗客は気付いていないが隣に居た俺は気付いた。
吐く。
この人、絶対に吐く。
あとどれくらい保ってくれるかわからなかったが、そうもたないだろうと思った。
今の状況が、もし出勤時の出来事であれば俺はこの場から逃げていた。
ただでさえ憂鬱な仕事前に、隣でゲロなんて吐かれたらたまったものではない。
だが俺は帰宅時における気の余裕と、偶然持ち合わせた良心が丁度いい具合に混ざり、慌てず女性を介抱するべく行動に移った。
まず、俺のバッグに入っていた歯ブラシや手鏡や香水やらが入ったポーチを取り出し、中身は全てバッグの中にぶちまけ、ポーチを開いて女性の口元へ持っていった。
ビニール袋でもあればその方がよかったのだが、あいにく持ち合わせがなかったので、ポーチでエチケット袋の代用をした。
布製のポーチなのであまり役に立たないかもしれないが、床にぶちまけるよりマシである。
女性の方も、近づけられたポーチの意味を察したらしく払いのける様な事はしなかった。
拒否する余裕もなかったらしい。
次に、窓側に座っていた俺の方に女性を移動させようとした。
酒が入っているので羞恥心があるかどうかはわからなかったが普通の人間ならば電車の中で嘔吐物と異臭を撒き散らし周囲の注目を浴びるなんて完全にトラウマものである。
窓際ならば周囲の視線も若干ではあるが遮れるだろうと思っての行動だったのだが…女性の限界は目前だったらしい。
今にも吐きそうだった。
もう間に合わない…。
俺は右手のポーチを半ば強引に女性の口に押し付け、女性の肩に左手を回して引き寄せた。
女性は俺の両膝の間に顔を突っ込む体制。
………男女による「アレ」に見えなくもない卑猥な体制である。
少しでも周囲の目から遠ざける為に咄嗟にとった行動だったので不可抗力だ…。
…うん。
すると、その体制になったまさにその時、女性が小さな声で女性「グエ…ッ!」女性「ゥエエゴブ……」息を殺して吐き始めた。
一応周りに人がいるという意識はあったらしく、声を出さないように努めているみたいだった。
が、一度吐き始めたらなら無理に止めたりせずに全部吐いてしまった方がいい。
俺は空いていた左手で女性の背中を摩った。
吐いている人の背中を摩るなんてした事なかったのでなんとなく新鮮な感じだった。
女性の嗚咽が周りに漏れ、近い場所にいた乗客がこちらに冷ややかな視線を送り始め、一部は離れ(逃げ)始めた。
俺は目が合った乗客に申し訳なさそうにぺこりと頭を下げた。
状況的に女性と俺が知り合いのフリをした方が自然だと思ったので女性を心配する素振りで耳元へ近寄って俺「大丈夫、大丈夫。」と何が大丈夫なのか自分でもよく分からない慰め言葉を呟きつつ背中を摩ってあげた。
右手のポーチは水分の許容量を超えたらしく滴っていた。
汚臭は思ったほど酷くなかったがさすがに無臭とはいかず、独特な臭いが周りに漂い始めていた。
俺は摩っていた左手を止め、自分のバッグの中に放った香水を取り出し、辺りに無雑作に振りまいた。
持ち歩いていた香水が柑橘系のフレッシュなタイプだったので消臭の役割も十分果たしてくれたと思う。
バッグに香水を戻し、再び女性の背中を摩り始めた時に、俺の右手首がピチャピチャと濡れた。
どうやら女性が泣いているらしかった。
そういえば吐く時って涙出るよなぁと感傷に浸っていた。
手首にポタポタ落ちてくる涙がなんとも切なかった。
俺が降りるはずの駅はもう間もなく着く頃だが、この女性を放って降りる気にはなれなかったのでやむを得ず乗り続けるのを覚悟した。
それより、この状況で見て見ぬ不利をする周りの人々にさすがにやや苛立ち始めていた。
でも無理もない。
俺だって逆の立場であれば見て見ぬ振りをしていただろうし…。
はぁ…。
さて、これからどうしようかと途方に暮れそうになっていた時。
乗客「大丈夫?」と、俺が降りるはずだった駅から乗り込んできた40代かそこらの男性が声をかけてきてくれた。
俺 「あ、はい。すみません…。」乗客「その子具合悪いの?車掌さん呼ぼうか?」おお。
なるほど。
そんな手があったか。
俺 「すみません。お願いできますか?」乗客「えぇ、呼んで来ますんで待ってて下さい。」心優しい乗客のおいちゃん。
ありがとう。
おいちゃんは言うとすぐに後方へ向かって行った。
おいちゃんが車掌さんを連れてくるまでの間、俺は女性の背中を摩っていた。
女性も既に吐き尽くしたのか、嗚咽もおさまり呼吸も整っていた。
しかし、恐らくは恥ずかしくて顔を上げられないのだろう。
ずっとうつ伏せのまま俺の右ひざにおでこを乗せ固まっていた。
しばらく女性を観察して大丈夫そうだと確認した後、俺がポーチの口をそっと閉めた時に車掌さんが現れた。
車掌「大丈夫ですか?お客様。」俺 「えぇ、大丈夫です。」車掌「コレ使って下さい。」厚めのビニール袋を俺に差し出してくれた。
既にマスクを着用した車掌さんはこれまた持ってきていた毛布のようなタオルケットを女性に被せ、そしてこれまた持ってきていた消臭剤やら消毒剤やらを辺りに振りまいていく。
(……慣れてるな…。
)きっと車内で吐く人ってそれなりにいるんだろうなと思った。
車掌さんは俺に対して、「次の停車駅で駅員を呼んで待機させているので一旦降りましょう」と促し、電車の後方に戻っていった。
どうやらここへ来る前に次の停車駅へ連絡しておいてくれたらしい。
完璧過ぎるぞこの人……。
 社会人としてすごく劣等感を抱いた………。
程なくすると次の駅に近づいてきた為、俺はタオルケットを女性の頭の上に改めて被せ直した。
顔さえ見られなければ起き上がっても恥ずかしさは随分軽減出来る筈である。
タオルケットの上から女性に話しかけた。
俺「次、降りますよ。」女性から返事はなかったが頭が少し頷いた。
電車がホームに入り速度が緩やかになったのにあわせて女性の身体をゆっくり持ち上げ、立ち上がらせる。
バッグを取ろうとする女性を制し、扉の方へ促した。
俺は汚れていない手で女性のバッグと自分の荷物を全て持って扉へ向かった。
改めて気付くと俺が居た車両にはほとんど人が居なかった。
そりゃゲロった車両に居たくないだろうし当然か。
しかし、よく見ると両側の車両からこちらをじろじろ見る人影が……。
あぁ憎い…視線が痛い…憎い痛い……こっち見んなクソッタレ。
扉が開きホームへ出ると、連絡を受けていたのであろう女の駅員さんが立っていた。
ほとんど吐き尽くして酔いも冷めたのか女性の足取りはそんなに乱れていなかった。
女性は駅員さんに具合を聞かれた。
が、まだ喋る余裕はなかったらしい。
俺「えっと・・・」俺は女性の代わりに駅員さんに状況を説明した。
せっかく早く帰れたのにタイムロスだなぁ…と心無い事を思いながら…。
手短に説明を終えた俺は、俺「これ、バッグ。」ずっと持ったままだった女性のバッグをそっと返した。
俺「すみません。自分はこれで失礼します。」と言いそそくさとその場を後にした。
駅員「どうもご協力ありがとうございました。」と駅員さんにお礼を言われ軽く会釈し、女性にも視線を送った。
女性も駅員に合わせて小さく頭を下げていた。
女性にも会釈を返し、反対側のホームへ向かった。
途中、男子トイレに入り、手洗いとうがいを済ませた。
どうやら女性は駅の控え室のようなところへ誘導されて行ったらしい。
…やれやれ災難だった。
ちなみにポーチは車掌さんにもらったビニール袋にぶち込み処分してもらった。
あの小物入れの代用品をまた探さないと…。
やってきた逆方面の電車に乗り込んだ俺はスマホを使いAm○zonで物色を始めた。
それからしばらく経ったある日の事。
俺は相変わらず残業の毎日を送っていてその日も会社を出たのは夜の11時過ぎだった。
終電の1つ前の電車に乗るのがもはや日課になりつつある。
人がポツポツとしか居ない駅のホームで電車を待つ。
―するとふと横から視線を感じた。
視界ギリギリのところで人の顔がチラチラ見切れる。
第六感とかではなく、完全に俺を2度見、3度見していた。
俺はチラ見する人に視線を移した。
視線を送っていたのは女性…。
あ…。
本来であれば他人と偶然にも目が合ってしまった場合、すぐに視線を外すのだが横にいた女性は以前、電車内でゲロった女性となんとなく雰囲気が似ていた。
ので、疑念のような視線を送ってしまった。
すると女性が、女性「あ、あの」話しかけられた瞬間「あぁ、やっぱりあのゲロった人だ」と確信した。
実のところ逃げ出したかった。
知らんぷりをしてしまいたかった。
が、返答した。
俺 「……はい。」女性「こ、この前、電車で………の方ですよね?」ずいぶん省略された質問だったが、無理もない。
俺はコンマ数秒悩んでから覚悟を決め…。
俺 「あ……。はい。…もう具合、大丈夫ですか?」あれから数日経っているのだからまだ具合が悪いわけがない。
ただ、返答としては間違っていなかったらしい。
女性「やっぱりそうですよね?!本当にご迷惑おかけしました。」ペコッ返答一発目で物凄く丁寧に謝られ、俺は密かにホッとした。
改めて女性を見ると随分物腰の柔らかそうな人だった。
美人とか可愛いとかいうタイプの顔ではなかったが、おっとりした優しげのある顔だった。
なんだかんだで、あの日は最初から最後まで女性の顔はほとんど見えなかったからなぁ…。
俺 「い、いいえ…俺なんもしてないですよ。」女性「そんな事ないです。本当に助かりました。」元々女性と話すのは得意でもなく、職場も年配のおばさん以外に若い女性は居ないので俺は少し緊張していた。
丁度その頃、待っていた電車がホームに入ってきた為、俺と女性は電車の中に乗り込んだ。
空席はたくさんあったが、なんとなく扉横の隅にある手すりに掴まっ立っている事に決めた。
すると女性も俺に添う形で近くの取っ手に掴まって俺に喋り始めた。
女性「いつもこんな時間まで残業とかされてるんですか?」俺 「あ、はい。最近はほぼ毎日ですね…。 えっと…、」女性「はいw 私も残業です…w でもまぁ今日はたまたま、というか。」俺 「あぁ、そうなんですか。お仕事、何されてるんですか?」女性「っと…。その。ゲームを作ってます。」俺 「ゲーム?」ゲームという言葉に思わず反応してしまった。
俺はけっこうゲーム好きである。
女性「はい。PS3とかのソフトを作ってる会社で働いてます。」俺 「おー、凄いっすね。俺もゲームやりますよ。」女性「本当ですか?!普段どんなのやってらっしゃるんですか?」俺 「…オンラインゲームとかよくやってますね…。」女性「お~・・・。」・・・。
どうやら女性が期待していた答えではなかったらしい。
俺 「どんなゲームを作ってらっしゃるんですか?」女性「…うーん。最近は対戦系のゲームを…。あまり有名な会社ではないので、知らないと思いますけど。」俺 「なんて名前の会社です?」興味津々の俺。
女性「えっと、○×って会社です」俺 「ぁ、知ってる」何が『あまり有名じゃない』だ。
ゲーム好きならそれなりに知れてる会社だった。
女性「ご存知でしたか?」俺 「はい。でもすみません。そこのゲームはやった事ないです。」女性「あらら…。」俺 「すみません……。」ちょっと気まずくなってしまった。
この空気は嫌なので話題を変えようと思った時、女性「…そ、それよりこの前の事なんですけど。」俺 「え?」女性「その…会えてよかったです。本当にありがとうございました。ずっとお礼言いたくて」俺 「あ…いや、別に…。」ドキッとした……。
心臓がドクンってするのがわかった。
「会えてよかった」とか女性に言われるのは初めてだったから。
女性「あの日、友達との飲み会の帰りでして」女性は淡々とゲロッた日の事を話し始めた。
きっと気にしているのだろうと思い、あえてあの日の話題は避けていたのだが、まさか向こうから話を振ってくるとは俺 「お酒は弱い方なんですか?」女性「はい。なのであまり飲みません。」俺 「あんまり飲まないタイプなのに、飲まされちゃった感じですか。」女性「久しぶりに会った友達と居酒屋に行って…、少ししか飲まないつもりだったんですけど…」俺 「…隣に居ただけでもお酒の匂い凄かったですよ。」女性「はい。私、飲めないわけじゃないんです。飲むとすぐ頭が痛くなるから飲まないだけで。あまり悪酔いしたりもしませんし。」俺 「あぁ・・・そういう事ですか。」女性「ただ、あの日は…。」俺 「飲んだと。」女性「はい…。ガブガブ飲んでました。」俺 「ガブガブってw」女性「お酒は嫌いなわけじゃないんです。でも、しばらくすると頭が凄く痛くなってきて、後悔するんですよね…。」俺 「あらら、それはまた難儀な体質ですね…」女性「はい…。」俺 「で、その帰りだったわけですね。」女性「えぇ。店を出た時点で既に頭は痛かったんですけど、改札口を通った辺りで吐き気までしてきて…」俺 「…。」女性「その日は、仕事で先輩に理不尽な怒られ方して、イライラしてたので…自棄酒飲んじゃいました。」俺 「なるほど…。」女性「あとは……あんな感じです。」俺 「色々大変でしたね。」女性「いえ、本当にご迷惑おかけしました。」ペコッ俺 「あぁ、もう謝んなくていいですから」オタオタ女性は思っていた以上にお喋り好きだった。
俺も会話をしていて楽しかったのだが、どうしても払拭して起きた事があった。
女性の態度からして大丈夫だと思いつつもハッキリさせておきたい事が。
俺 「というか、すみませんでした。」女性「??」俺 「その…身体ベタベタ触ってすみませんでした。」女性「え?」俺は過去に、駅のホームで並んでいる時に「おを触られた!」と前の女に叫ばれ、警察に突き出された事がある。
当時、俺は就職したばかりだった。
慣れないスーツに身を包んで会社へ向かう際に痴漢呼ばわりされたのだ。
完全に冤罪だった。
でも証拠が何もなかった。
結果から言うと俺は幸い逮捕はされずに済んだ。
ホームの監視カメラに俺と女が映っていたらしく、俺が女のを触っていないのが映像で確認出来たとの事だった。
しかし、警察に取調べを受けている時間は正直、生きた心地がしなかった。
それからというもの、俺は電車を使わずに出勤する手段を考えた。
ただ、仕事を始めたばかりの平社員には金銭面で無理をする余裕なんてなかった。
電車出勤はやむを得なかったので、出勤時間早めにずらし、駅のホームでは最前列か男性の前にしか並ばないようにし、電車内では両手を手すりに置くか、座って手を組んだりスマホを扱うよう心がけた。
俺はその日から冤罪の恐怖を植え付けられた。
このゲロった女性が始めに俺の隣に座ってきた時、避けるように窓際に寄ったのはその名残だったと思う。
女性「はい?」俺 「あ、いや。色々とお節介だったかなって思ってたので。」女性「?? いや、そんなわけないじゃないですかw ホントに感謝してますから。」俺 「…だったら、よかったです。」女性「ははw」女性が微笑んでくれて心底ホッとした。
言葉に例えるのが難しいけど本当にホッとした。
俺は今日このホームで女性と再会した瞬間逃げ出そうと思った。
冤罪の事が頭から離れない俺はいつかこのゲロッた女性が現れて、「ドサクサに紛れて私の身体触ったでしょ!!」と、俺を引っ立てにこないか一縷の不安と恐怖を抱えていた。
親切心で介抱してあげたのだから、そんな筈が無いと思ってはいても別に女性に介抱を頼まれたわけでもない。
それに身体を触ってまで色々してあげる理由もなかった。
だから俺はホッとした。
この女性が俺に対して心から感謝してくれていた事に。
女性「それに、私の事かばってくれましたよね?」俺 「え…?」女性「私に袋を渡してくれたり、背中摩ってくれたり、顔にタオル被せてくれたりとか」俺 「……。」女性「あと、私に『大丈夫、大丈夫。』って言って励ましてくれたり。あれはホントに嬉しかったです。」俺 「…え……??」女性「見ず知らずに人にここまでやってくれる人がいるんだってちょっと感動してたくらいです。」俺 「あ、…いや…。」なに言ってんだこの人。
俺は内心で「運わりぃ~」とか「早く帰りてぇ…」だの思ってた腹黒だぞ。
別れたあとトイレですぐ手洗いうがいしたし。
女性「私の方こそ、ごめんなさい。一言すらお礼も言わずに…。何度お礼言っても足りないと思ってます。」俺 「いや。…そんなに感謝してもらえたなら、俺も嬉しいです。」本音だった。
こんなにイイ人もいるんだなって思った。
ここまで親切に感謝出来るこの女性の方が腹黒の俺なんかよりよっぽどイイ人である。
そんな事を思っていると…女性「あの。」俺 「はい?」女性「よかったら、連絡先とか教えていただいていいですか?」俺 「え?」女性「あ、ご迷惑であればいいんですけど」自分の情報を女性に渡す事に反射的に不安を抱いたがすぐに迷いは消えた。
俺 「全然構いませんよ。」女性「ありがとうございます。ちなみにLINEとかやってます?」俺 「はい。」女性「おー!じゃあID教えて下さい!」てな感じでゲロッた女性とLINEでやりとりをするようになった。
連絡先を交換した翌日に女性からLINEで連絡があって、『袋、弁償したいので今度一緒に買い物に行きませんか?』とお誘いがありました。
弁償なんてしなくていいと断りましたが、どうしても!という女性の強い押しに負けて、一緒に買いに行く事になりました。
その日、生まれて初めて女性とデートをしました。
そんな出来事があったのが丁度去年の12月のクリスマス前の事です。
いまもその女性とは恋人同士という形でお付き合いさせていただいています。
終 エロクナクッテスミマセン